中田 研究室
研究室紹介Laboratory
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戻る研究室概要
この研究室では、ヘルスイノベーションや公衆衛生などに関する研究倫理、倫理的?法的?社会的課題(Ethical, legal, and social implications/issues: ELSI)の検討や、研究への患者?市民参画(Patient and public involvement: PPI)の実践や研究を行っています。研究倫理やELSIやPPIの観点をもち、ヘルスイノベーションと社会とのつながりに関心を寄せることで、ヘルスイノベーションのよりよい推進に役立つと考えています。この研究室では、多くの機関と連携しながら、研究活動を行っています。
研究倫理とは
生命倫理学の一分野で、主に「人を対象とする研究」における被験者(研究対象者)保護の課題を検討する学問分野です。医学研究に焦点があてられることも多く、研究対象者が研究に関わることによって、搾取されたり、権利を侵害されたりしないような配慮やルールなどを検討します。具体的な例として、研究参加の同意(インフォームド?コンセント)のあり方などが挙げられます。
倫理的?法的?社会的課題(ELSI)とは
米国で1990年から行われた、人の遺伝情報を解読する「ヒトゲノム計画(Human Genome Project)」の推進に際して提唱されました。この計画の中では、ヒトゲノム解析研究とその応用から生じうる倫理的?法的?社会的課題(ethical, legal, social implications: ELSI)を予測して、事前に対応を検討することが目指され、ELSIプログラムとして様々な研究や教育が展開されました。現在では、ELSIという言葉と考え方は、ヒトゲノム解析研究にとどまらず、多くの研究領域で用いられるようになっています。
患者?市民参画(PPI)とは
この研究室では「研究における」患者?市民参画に焦点を当てています。研究における患者?市民参画とは、研究者と患者?市民が協働して研究の各プロセスを進めることを指します。研究活動に、患者?市民の視点を取り入れることで、より社会に受け入れられやすい研究になったり、研究対象者により配慮された研究になったりすることが期待されます。
主な研究活動
新しい医療技術を社会実装する際の倫理的?法的?社会的課題に関する研究
再生医療などの新しい医療技術や、日本でまだ承認されていない薬やワクチンなどを広く社会に普及させる際には、患者?市民との関わりにおいて様々な課題が生じることが予想されます。例えば、患者?市民がその医療技術をどの程度受け入れ、どのような懸念と期待を持っているのかということ、医療技術の研究開発にどの程度協力の意向があるかということ、その医療技術を皆が等しく利用できるのか/できるようにすべきなのかということなどが挙げられます。こうした課題に関する文献調査や意識調査などを行い、検討を進めています。
関連する主な研究費(終了したものを含む)
- 国立研究開発法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(RISTEX) 科学技術の倫理的?法制度的?社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム (研究代表者?八代嘉美(日本再生医療学会)、研究実施者?中田はる佳)
- 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 感染症研究開発ELSIプログラム 新興感染症流行時の未承認薬利用と研究開発に対する市民の態度に関する研究 (研究開発代表者?中田はる佳)
- 日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 未承認医療技術への患者アクセスのあり方に関する研究 (研究代表者?中田はる佳)
医学系研究への患者?市民参画を推進する施策に関する実践?研究
近年、医学研究への患者?市民参画(PPI)の必要性が広く認識され、政策的にも推進されています。PPIの施策は諸外国で先行していますが、日本でも徐々に実践が積み重ねられてきています。それと同時に、様々な課題も生じています。例えば、PPIの定義をどう考えるべきか、よりよいPPIを行うためにどのようなルールをつくるべきか、PPIを行うことで各関係者にとってどのようなメリット?デメリットがあるかということなどです。こうした課題に関するインタビュー調査や文献調査などを行い、検討を進めています。また、がんに関する研究やゲノム研究などへのPPIの実践にも関わっています。
関連する主な研究費(終了したものを含む)
- 厚生労働省 政策科学総合研究事業(倫理的法的社会的課題研究事業) 人を対象とする生命科学?医学系研究における患者?市民参画の推進方策に関する研究 (研究代表者?武藤香織(東京大学)、研究分担者?中田はる佳)
診療データの二次利用と倫理的?法的?社会的課題に関する研究
私たちが患者として病院にかかるとき、診療のために多くのデータを病院に提供しています。病院に蓄積された多くの患者の診療データは、各患者の診療の目的で使用されると同時に、医療分野の研究開発の目的にも利用されることがあります(これを「二次利用」などと呼びます)。医療AIなど患者の診療データを大量に必要とする研究をはじめ、患者の診療データを二次利用した研究が多く行われています。こうした研究は医療分野で新しい知見を生み出すことに大きく貢献しています。それと同時に、個人情報の保護や、診療データの利用に関する本人の承諾のあり方、患者?市民から信頼されるデータ利用のあり方などが課題として挙げられます。こうした課題に関する意識調査や文献調査などを行い、検討を進めています。
関連する主な研究費(終了したものを含む)
- 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事業(倫理的法的社会的研究事業) 保健医療分野におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用に係る倫理的?法的?社会的課題の抽出及び対応策の提言のための研究 (研究代表者?中野壮陛(医療機器センター)、研究分担者?中田はる佳)
- 厚生労働省 厚生労働科学研究補助金(倫理的法的社会的課題研究事業) がんゲノム医療推進を目指した医療情報の利活用にかかる国内外の法的基盤の運用と課題に関する調査研究 (研究代表者?中田はる佳)
上記以外にも、医療機器の研究開発に関する倫理的?法的?社会的課題の検討や、医学分野における利益相反に関する検討など幅広い研究活動を行っています。
受験生へのメッセージ
研究倫理、ELSI、PPIなどの研究は、ヘルスイノベーションと社会とをつなぎ、その推進の基盤となるものです。今後、保健?医療?福祉分野のどんな課題を検討する場合でも、倫理的?法的?社会的な観点からの検討が必須になるでしょう。このことは、ビジネスパーソン、研究者、政策立案者など、皆さんがどのキャリアに進んでも共通して言えると考えています。よりよいヘルスイノベーションを実現するための基盤づくりや、ヘルスイノベーションと社会とのつながりを考えることに関心がある方は、ぜひご連絡ください。
主な業績
論文
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中田はる佳, 三村麻子, 八巻知香子, 横野恵. がん患者の立場からみた全ゲノム解析研究への患者?市民参画の可能性と課題. 臨床薬理. 54(6) 223-231. 2023年11月. doi: https://doi.org/10.3999/jscpt.54.6_223
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Nakada H, Watanabe S, Takashima K, Suzuki S, Kawamura Y, Takai Y, Matsui K, Yamamoto K. General public's understanding of rare diseases and their opinions on medical resource allocation in Japan: a cross-sectional study. Orphanet J Rare Dis. 2023 Jun 8;18(1):143. https://doi.org/10.1186/s13023-023-02762-x
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中田はる佳, 横野恵, 永井亜貴子. がん領域における全ゲノム解析研究とオンラインによる患者?市民参画の実践. 臨床薬理. 53(6) 169-175. 2022年9月. doi: https://doi.org/10.3999/jscpt.53.5_169
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Nakada H, Takashima K, Maru Y, Ikka T, Yuji K, Yoshida S, Matsui K. Public Attitudes toward COVID-19 Vaccinations before Dawn in Japan: Ethics and Future Perspectives. Asian Bioeth Rev. 2022 May 11;14(3):287-302. doi: 10.1007/s41649-022-00207-4
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Nakada H, Folkers KM, Takashima K. Comparative Assessment of Non-trial Access to Investigational Medical Products in the U.S. and Japan. Ther Innov Regul Sci. 2021 Mar;55(2):401-407. doi: 10.1007/s43441-020-00228-x. Epub 2020 Oct 23.
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Nakada H, Inoue Y, Yamamoto K, Matsui K, Ikka T, Tashiro S. Public Attitudes Toward the Secondary Uses of Patient Records for Pharmaceutical Companies' Activities in Japan. Ther Innov Regul Sci. 2020 May;54(3):701-708. doi: 10.1007/s43441-019-00105-2. Epub 2020 Jan 6.
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中田はる佳. 米国における未承認薬利用制度の拡大をめぐる議論 ―Right-to-Try 連邦法の成立過程から―. 臨床薬理. 51(2) 83-91. 2020年3月. doi: https://doi.org/10.3999/jscpt.51.83