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戻る精神障害を抱える当事者とソーシャルワーカーの関係性を探求して
- 氏名
- 井上 夏子
- 所属
- 社会福祉学科
- 研究分野
- 人文?社会,社会福祉学,ソーシャルワーク
キーワード | 精神保健福祉領域のソーシャルワーク,専門的援助関係 |
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取り組み内容
私は、精神保健福祉領域のソーシャルワーカーとして、主に医療機関における実践に従事してきました。日々の実践の中で向き合う精神障害を抱える当事者の方たちとの出会いは、私の専門職としてのアイデンティティに多くの学びを与えてくれました。現場を離れて研究領域に自分のフィールドを移した時、「皆さんらしい人生を送っていくことを心から願う」と同時に、自分自身もまた同じように「自分らしい人生を送っていこう」と思わせてくれたのは、当事者の方たちと専門職の仲間たちでした。そこにある思いは、立場に依拠するものではない、「人と人」としてのかかわりの形であったように思います。
ソーシャルワークにおいて、「専門的援助関係」と称される専門職と支援対象である当事者との関係性は、時に専門職の権威性の誇示や、パターナリスティックで保護的な態度によって不均衡を生み出し、「対等性」や「平等」を謳うことは理想論として語られることもあります。しかし、専門職だからこそ築くことのできる「信頼感」や「安心感」が当事者の方たちの暮らしと人生を支える、そして、そのことによって専門職がより成長していくことができる、そのような関係性の形が存在するはずだ、という思いが私の研究に向き合う糧となっています。
現在は、精神障害を抱える当事者と専門職の「専門的援助関係」に着目しながら、良好な関係性のモデルとしての「パートナーシップ」をキーワードに研究を続けています。現場で活躍されている精神科ソーシャルワーカー(Psychiatric Social Worker:PSW)の考える「関係性」についてインタビュー調査を行い、かかわりの中で実際に何が起きているのか、専門職としての機能はどのように影響を及ぼしているのかを明らかにしたいと考えています。そして、さらに、それを当事者の方たちの考える「関係性」の形とリンクさせながら、「パートナーシップ」という一つの形にして成立させていくことが目標です。
『ケースワークの原則』(1957-2006)を著したBiestek(1912-1994)は「関係性」はソーシャルワークの「魂」であると言っています。ソーシャルワーカーとしてその根幹にあるものを知り、多くの仲間と「魂」の共有ができるような研究を目指しています。
メッセージ
私の研究は、精神保健福祉領域の当事者の方たち、実践に取り組むソーシャルワーカーの方たちの「声」から学ぶことだと考えています。自分だけでは辿り着けないような道のりも、多くの協力者の方たちと歩むことで大きな成果につながることができます。これまでの実践で得られたかけがえのない経験を活かし、現場の実践と研究をつなぐ役割の一端を担っていきたいと思っています。