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戻る在宅勤務の開始がハラスメントリスク低下、メンタルヘルス悪化と関連
戻る在宅勤務の開始がハラスメントリスク低下、メンタルヘルス悪化と関連
~コロナ禍における職場のハラスメントとメンタルヘルスとの関連について(研究報告)~
本学ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。
その一環として、このたび本学の津野香奈美准教授らが実施した標記の研究成果がまとまり、論文としてBMJ Openに掲載されましたので、お知らせします。
1 研究の背景?目的
一般的に、いじめ?ハラスメントは環境が大きく変化すると増加することが知られている。そこで本研究では、職場のハラスメントを経験した労働者の割合、コロナ禍でハラスメントを受けやすい労働者の属性、ハラスメントとメンタルヘルス等との関連を明らかにすることを目的として、2020年8月から9月に実施した全国の労働者16,384 名の調査データをもとに分析を行った。
2 研究結果
〇 コロナ禍で、いじめ?ハラスメントを経験していた労働者は15%。女性や非正規職員より、 男性、会社役員、管理職、正規職員の方がいじめ?ハラスメントを受けるリスクが高い
女性と比べ男性は1.3倍、非正規職員と比べ会社役員は1.8倍、管理職は1.4倍、正規職員は1.3倍、職場でいじめ?ハラスメントを受けていた。
〇 いじめ?ハラスメントは精神障害や希死念慮(※)のリスクを高める
職場でいじめ?ハラスメントを受けた者は、そうでない者に比べ、重症の精神障害を持つリスクが2.8倍、希死念慮を持つリスクが2.1倍であった。
〇 在宅勤務の開始はいじめ?ハラスメントを受けるリスクを減らすが、精神障害や希死念慮のリスクは高まる
コロナ禍で在宅勤務を開始した労働者は、在宅勤務を開始しなかった労働者と比べて、職場でいじめ?ハラスメントを受けるリスクを18%低かった一方で、重症精神障害を持つリスクや希死念慮を持つリスクは、1.2倍高かった。
(※)具体的な理由はないが、漠然と死を願う状態
(評価方法)
2020年4月以降に職場でいじめ?ハラスメントを経験したかどうかは、新職業性ストレス調査票の1項目で測定し、「そうだ」と回答した者をハラスメント曝露群とした。重症精神障害はK6(13点以上)、希死念慮は「死んでしまいたいと思うことがあった」の1項目で測定した。
他に、個人属性?職業特性?社会経済的状況として、性別、年齢、学歴、配偶者の有無、世帯年収、雇用形態、業種、事業所規模、仕事の特徴(デスクワーク、肉体労働、人と接する仕事)、過去1か月間の週あたり労働時間を尋ねた。解析は修正ポアソン回帰分析を用いた。
3 まとめ
本研究結果から、コロナ禍においては、コロナ禍以前に比べより多くの労働者がいじめ?ハラスメントを経験していたこと、職位が上位の者もハラスメントを受けるリスクが高いことが明らかとなった。
また、いじめ?ハラスメントの経験は、重度の精神障害の発症や自殺のリスクを高める可能性が示唆された。
さらに、在宅勤務の開始はハラスメントを受けるリスクを減らす一方で、メンタルヘルス不調を増やす可能性が示唆された。
コロナ禍における社会?労働環境の変化による職場のいじめ?ハラスメントの被害者の状況や具体的な影響が明らかになったことから、「ハラスメントは誰もが受けうるもの」との認識のもと、上司や同僚、または産業医などに相談しやすい環境など、誰もが健康に働くことができる職場づくりに向け、具体的なハラスメント防止対策に取り組む必要がある。
(論文掲載)
Tsuno K, Tabuchi T. Risk factors for workplace bullying, severe psychological distress and suicidal ideation during the COVID-19 pandemic among the general working population in Japan: a large-scale cross-sectional study. BMJ Open. 2022 Nov 2;12(11):e059860.
doi: 10.1136/bmjopen-2021-059860.
問合せ先
公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院
ヘルスイノベーション研究科
准教授?津野香奈美
ヘルスイノベーションスクール担当部長 沖田
電話 044-589-3312 shi-press@kuhs.ac.jp